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日本吃音・流暢性障害学会

理事長挨拶

長澤泰子

長澤 泰子

 2013年に設立された日本吃音・流暢性障害学会は7年目に入り、会則に従い2019年に2回目の役員選挙が行われました。その結果、私がさらに3年間、理事長を務めることになりました。会員の皆様のご期待に添えるよう、誠心誠意努力したいと思います。

 本学会は、発足してから7年目に入り学術総会も7回実施してきました。どの大会も、大会会長や会員の皆様の献身的なご努力の結果、素晴らしい成果を収めてきています。特に2018年の第6回広島大会は、IFA(国際流暢性学会)・ISA(国際吃音者協会)・ICA(国際クラタリング学会)・言友会と本学会の5組織が合同で開催した国際会議となりました。西日本をおそった台風の影響で、交通網に問題が起きたにもかかわらず、海外からの参加者を含め、600人以上の人々が会場を訪れ、熱気にあふれた、意義のある大会となりました。

 最近の世間の動向を見ると、吃音に対する認識がかなり変化したように思えます。新聞やテレビなどマスコミで取り上げられることが以前に比較して多くなったこと、吃音交流会などの名称で中学生や高校生への情報提供をする集会も多くなっていること、吃音カフェなどの名称で親と子が共に吃音について学ぶ保護者主体の会が増えていること、当事者主催の研修会や講習会が各地で開催されていることなどがその一端として挙げられると思います。また、小学校の「ことばの教室」ではグループ指導も盛んになっており、子どもたちが自分の吃音について考え、それをまとめて発表したりします。自分で自分の吃音のことを周囲に知らせることの大切さを学んでいるようです。これらの活動に関係しておられる方の多くが、本学会の会員であることを考えると、胸を張りたくなります。

 話は変わりますが、私がはじめて吃音の講義を受けたのは、ウィチタ州立大学(カンサス州)の大学院でのことでした。1963年ですから、50年以上前のことになります。授業の冒頭で“Why do we have two brains?(我々は何故2つの脳があるのか”)という質問から始まったのです。当時は、ジョンソンの診断原因説が隆盛を極めていた時でしたから、大変刺激的な授業でした。担当の教授は、Dr. Martin F. Palmer で、1950年代に田口恒夫先生のご尽力により、言語障害に対するアドバイザーとして日本の事情を視察なさった方でした。授業では当然、生理学・心理学・社会学など様々な話題が出てきましたが、卒業近くなってからの臨床に対する教えを忘れることが出来ません。「言語病理学の基礎はサイエンス、しかし臨床というのは、サイエンスは、5%、アートが95%の世界だ。それをけっして忘れてはいけない」というものでした。1970年になり、東京の福祉センター、2年経ってからは横須賀にある国立特殊教育総合研究所において、毎日の臨床に四苦八苦するようになって、ふと思い出したのが、Dr. Palmerのこのことばでした。四苦八苦の原因はおそらく、サイエンスのみを追いかけアートをないがしろにしていたからだろうと思い至ったのです。

 

 本学会の目的は、吃音・流暢性障害のある人のQOLの向上を図ることです。目的達成のためにやるべきことは山積しています。当事者や保護者の支援、早期介入、社会の理解・啓発、勿論吃音セラピーの方法等々。どれひとつ取り上げても、簡単にいかないものばかりです。結局、急がば回れ。自分達の行動を時に修正しながら、地道に行動していくことが求められているような気がします。会員の皆様のご協力を得ながらそのような方向に向かっていきたいと思います。

理事長 長澤 泰子

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